2018年06月20日
事故報告:冒険サイクリング

5月27日、コンピカ冒険隊は佐賀県のど真ん中の山の中で冒険サイクリングを実施ししましたが、大変残念なことに転倒事故があり、一人のお子さんが前歯を折る大けがを負ってしまいました。
主催者として責任を痛感するとともに反省をもってご報告いたします。

冒険サイクリングとは子供たちが地図とコンパスを頼りに目的地を目指すサイクリングです。
ただし、読図やコンパスの使い方を学ぶことより足の向くまま気の向くままに走るサイクリングの楽しさを体験することを大切にしているので、迷走OK、目的地につけなくてもかまわない、着けないときは伴走車が回収するというゆるいサイクリングです。
とはいえ、リーダーは分かれ道ごとに交代し、みんなが行く道を決めなければならないのでそれなりにプレッシャーもあり、自分で考え、自分で決定し、行動するということを経験できます。

今回は唐津市浜玉町の椿山ため池から相知町の見返りの滝を目指す15kmのコースでした。
子供たちは出発後最初の交差点で目的地とは逆方向へ。
私は車を目的地に回送中でしたが引率メンバーから「気分が悪くなった子がいる。」と連絡が入ったので急遽戻って鳥巣公民館で子供たちと合流。気分が悪くなったという子はただ疲れただけでした。
もう正午だったのでそこで昼食をとることにしました。

後日わかったことですが子供たちは来た道を戻ることもできず、迷走を繰り返して、公民館のところへ戻ってくるのもやっとだったそうです。
でも、そんな中でも走りたくて走りたくてたまらない様子で「どこでもいいから前へ進もう!!」という感じだったようです。
午前中を棒に振ったので見返りの滝まで行くのは無理と判断し、ほんとうは昼の休憩場所と考えていた七股ため池に目的地を変更。
12時40分ごろ鳥巣公民館を出発しました。
しかし、辺保の集落そばでまた道を間違え、浜玉方面へ。
ただ、だいぶ慣れきた子供たちの中には「この道間違ってるんじゃないか?」と気がついた子が何人かいました。

「道と地図が合ってない。」「いや道のかたちはこっちでいいよ。」子供たちの意見はまとまらず、間違いに気づいていない子(そんなことよりとにかく走りたい)は前へ進みたい気持ちが爆発しそうな様子です。
「行く道は隊長が決めるんだ。間違ってると思ったら自分の番がきた時に直そう。」という私のアドバイスで進むことになりましたが、走りたい気持ちがあふれてしまった子供たちは隊列を組むことなく一塊で走り出してしまいました。

冒険サイクリングの隊列は隊長が先頭、2番目が大人でスピードをコントロール、3番手以下は次の隊長の順番で走り、最後尾を大人が締めて2列走行や後方からの車の接近を注意するというものです。
しかし、このときは2番手を走るスタッフが自転車に乗らないうちから子供たちが走り出してしまったため、隊列を組むこともスピードをコントロールすることもできないまま走り出してしまったのでした。

ここからは私は見ていません。
ただ、スタッフや子供たちの話を総合するとこういうことだったようです。
「スピード落とせ!危ないよ!」というスタッフの言葉も先頭を走る子供たちには届かず、遅れてそれを追う子供たちも指示より前を行く仲間に追いつくことに夢中だったようです。
あるいはスタート時の勢いと下りでの加速がつきすぎて減速できなかったのかもしれません。
2つ目のカーブで事故が起きました。
先頭グループを追っていた4年生の女子が急なカーブを曲がり切れず、アスファルトの縁の杉の落ち葉のたまっているところでスリップして転倒したのです。

最後尾から子供たちを追っていた私が現場へ着いたとき、先行していたスタッフが斜面に落ちた自転車を拾い上げているところでした。
乗っていたと思われる子は立っていたのでほっとしましたが、あごや腕に擦り傷を負い「歯が折れちゃった。」と血だらけの口を開けて見せてくれました。
傷を洗って消毒しながら、119番に電話して救急病院を尋ねましたが当番医には歯科医がいないとのこと。歯科医がいる病院の電話番号を教えてもらったのでかけてみると歯科は閉鎖したとの返事。
119番が唐津の消防署のため唐津の情報しかなかったので、私がすったもんだしているうちにスタッフが佐賀の情報を調べてくれて、メディカルセンターの休日歯科診療所と連絡がつきそちらへ行くことになりました。
この間子供たちからの連絡で事故を知ったご両親からお電話をいただきましたが、取り込んでいたので怪我をしたお子さんのご両親以外は出ませんでした。緊急事態のことなのでご容赦ください。

休日歯科診療所では素早く対応していただきましたが、そこだけではすまず佐賀医大へ。
私は先生に現場の状況をお話しするまでご一緒させていただきましたが、その説明を終えたところで退席させていただきました。
つらい時間ではありましたが、怪我をしたお子さんが気丈で事故直後から泣くこともなく淡々としていてくれたのがありがたかったです。
今回の事故は子供たちのはやる気持ちを抑えることができなかった私の責任です。
ただ、リーダーを勤めたお子さんやコンピカの全員が小さい子、弱い人への配慮があれば防げた事故でもあります。
コンピカ冒険隊では「自分の安全は自分で守る。」「一人でできないことはみんなで力を合わせよう。」「お互いに注意しあって安全を守ろう。」
ということをいつも言っています。
これが子供たちの心に根付いてくれたらコンピカ冒険隊の活動は飛躍的に安全になると思います。
各ご家庭でこの事故のことを話し合っていただいて、子供たちの成長の糧にしていただければ幸いです。
コンピカ冒険隊代表 田中信明